『Scene1:発端は…』(玖編)


「あれ〜、おっかしーなー・・・絶対ここに置いといたハズなんだけど・・・」
鉄生が、散らかった自分の仕事机の周りをあさりながらブツブツと呟く。
と、そこに相変わらず縛りの本を片手に、陵刀が入ってきた。
「どーしたの、鉄生くん?」
「あぁ、陵刀。ここに置いてあったチーズケーキ知らねーか?」
「え?そ、それは・・・」
言いながら、陵刀の目は心なしか明後日の方向に向いていく。
「陵刀・・・?」
呼びかけると、ゆっくりその目が鉄生の方に戻ってきた。
そして・・・
「ゴメン、鉄生くん!僕が食べちゃったんだ!」
「なっ・・・!?」
その告白に、鉄生は一瞬言葉を失った。
「だって、そんな所に無防備に置かれてたら、食べて下さいって言ってるようなモンじゃない?」
悪気がなさそうな陵刀の言い訳を聞いていた鉄生の肩が、怒りでフルフルと震えだした。
「お前・・・俺があれを買うのにどれだけ苦労したと思って・・・」
「ゴメンって・・・ホラ、ケーキならまた僕が買ってあげるからさ・・・」
「一日50コの限定品・・・俺は朝から1時間も並んだんだぞ!せっかく休み時間に食べようと思って楽しみにしてたのに!」
鉄生は子供のように怒りを露わにしながら、早口でまくし立てる。
食べ物の恨みは恐ろしい。
食べることが好きな鉄生にとっては尚更だ。
「馬鹿野郎!サボリ魔!変態!」
その台詞を聞いた陵刀の表情が一瞬強張った。
「そこまで言わなくてもいいでしょう!?ちゃんとしまっとかなかった君も悪いんだから!」
より自分が悪いのは分かっていた陵刀だが、変態とまで言われては、黙っていられなかった。
「な・・・なんだよ!俺が悪いのかよ!?・・・お前なんかチーズケーキの角に頭ぶつけて死んじまえっ!」
小学生のような言葉をぶつけて、鉄生は部屋を飛び出した。


*つづく*

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送