『Scene2:再会?』(玖編)


「勢いでREDまで来ちまったけど、さすがにパジャマのままは恥ずかしいな。」
REDの廊下を歩きながら、てっしょうは独り呟く。
怒りにまかせてりょうとうの家を飛び出したのはいいが、パジャマのままだったので、
ここに来るまでに道行く人たちの注目を浴び、恥ずかしい思いをしたのだ。
「とりあえずロッカーで・・・」
ロッカーに行けば、自分の医療着が入っている。
まずはそれに着替えようと、足をそちらに向けたときだった。
「鉄生くん!探したよ!」
今一番聞きたくない声に自分の名前を呼ばれた。
確かめるようにゆっくり振り返ると、目に入ったのはやはり想像した声の持ち主だった。
「げっ、りょうとう!!もう追いついたのか!?・・・って、なんで白衣着てんだ??」
よく見ると、りょうとうはキッチリ白衣を着込んでいる。
「ヤダなぁ、さっきまで一緒に仕事してたじゃない。キミこそ、なんでパジャマ着てるの?」
「はぁ?何言ってんだ、りょうとう・・・今日は休みじゃねぇか。」
こいつ、ついにボケたか?と考えながら、てっしょうは今日は仕事が休みだと言うことを告げる。
「キミこそ何言ってるの?さっきも喧嘩して・・・って、まだ怒ってる?」
そう、てっしょうたちは喧嘩中だったのだ。
しかも、そのときは夢中で気がつかなかったが、走ったせいでさらに腰の痛みが増しているような気がする。
「当たり前だ!腰まだ痛いんだぞ!!」
腰をさすりながら、てっしょうはその痛みの原因をつくった相手をにらみつけた。
「ちょ、ちょっと待って。僕、キミの腰に何かしたっけ?」
身に覚えのないことに、陵刀は狼狽する。
「お前またそんな事・・・俺が何で怒ってるかわかってんだよな?」
陵刀の答えに少しあきれ気味のてっしょう。
今更ながら、喧嘩の原因を再確認する。
が、陵刀の答えは、てっしょうの想像していたものとは違っていた。
「僕がケーキを食べちゃったからでしょう?」
「え?ケーキなんて知らねーぞ?」
「忘れたの?鉄生くん、あんなに怒ってたじゃない。」
今度は陵刀があきれたような顔をする。
「忘れるわけ無いだろ!今でも怒ってるんだからな。」
「でも今、知らないって・・・」
「ケーキの事は知らねぇ!もしかして・・・お前俺のことはぐらかそうとしてる?」
いくらなんでも今朝の出来事をそんなに簡単に忘れるヤツはいない。
てっしょうは陵刀に疑いの目を向ける。
「するわけ無いでしょ、そんなこと。・・・キミ、鉄生くん・・・だよね?」
あまりに話がかみ合わないので不思議に思った陵刀は、分かり切ったことをてっしょうに質問した。
「何当たり前なこと聞いてんだ、りょうとう?」
返ってきたのはやはり「当たり前」という、「当たり前」な返事。
「そうだよねぇ・・・」
と、陵刀も苦笑しながら返すしかない。
「もういいよ、後で話そう。俺服着替えたいし。」
これ以上話しても埒があかないと感じたてっしょうは、当初の目的を思い出したようだ。
「あ、そうだね。とりあえず服着替えに行こうか。」
陵刀は話がかみ合わないことに首をかしげつつ、同じく首をかしげるてっしょうの背中を押しながらロッカーに向かった。


*つづく*

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