2月14日、バレンタインデー。
世間では、女性が好きな男性にチョコレートを贈り自分の想いを告げる日である。
しかし俺にとって、もうひとつ特別な日でもあるワケで・・・


『Sweet Kiss』


「なぁなぁ鳳、お前今日チョコいくつ貰った?」
放課後、部室に入るなり向日先輩がそう尋ねてきた。
「え、え〜っと、去年と同じぐらいだと思いますけど・・・」
答えながら部室の隅に目をやると、背中に暗いオーラを背負いながら体育座りした忍足先輩の姿が・・・
「忍足先輩何かあったんですか?」
「さぁ?今日は朝からあんな感じだったぜ。」
「はぁ・・・」
数秒、二人で忍足先輩に目をやる。
すると急に向日先輩はハッと思い出したように言った。
「あ、俺ちょっとジロー探してくるわ。アイツまたどっかで眠りこけてると思うからさ。じゃあ後よろしく〜!」
「え!ちょっと待っ・・・」
―パタン―
逃げられた。
こんな状態の忍足先輩と二人っきりにされても、どうしたらいいかわかんないよー。
「鳳・・・」
「は、はい!」
声のした方を向くと、いかにも「どよ〜ん」という効果音がぴったりな雰囲気の忍足先輩がコッチを見ている。
そして・・・・・泣き付かれた。
「聞いてーや鳳!そりゃ景ちゃんは綺麗やし頭エエしちょっとエラそうやけどそこもやっぱり可愛いし、たまに見せる笑顔が絶品やから、
 みんながチョコあげる気持ちはよう分かる!」
「そ、そうッスね・・・」
「けどな、景ちゃんはそのチョコやらプレゼントやらを全部貰う必要ないと思わへん!?俺という彼氏がおると言うのに!」
つまり、忍足先輩は妬きもちをやいて拗ねてるだけ・・・ということか。
でも俺に言われてもなぁ。どうしたらいいんだ?
・・・と考えていると、勢いよくドアが開いて、その原因の人が樺地と一緒に入ってきた。
そして開口一番・・・
「おい、忍足。お前今年は俺様にチョコをくれないつもりか?アーン?」
なんの躊躇いもなく、むしろエラそうにそんなセリフが言えるアナタを、俺はある意味尊敬します・・・
「なにゆーてんねん。景ちゃんはもうぎょーさん貰たやろ?」
「バーカ、あんなもん全部捨てちまったよ。」
「景ちゃん!」
こ、この二人は俺と樺地がいることを分かってるんだろうか?
さんざんラブトークを繰り広げた後、跡部部長は樺地に
「今日の練習はナシだ。部員にそう伝えとけ。」
とだけ残して、忍足先輩と二人で帰ってしまった。
樺地も、部長の伝言をみんなに伝えるべく、部室を出て行った。


なんか、凄くつかれたな〜。
今日は部活も休みになったし、早く帰ってゆっくり・・・
って、部活休みだとあの人に会えないじゃないか!!
「今日、俺はあの人から・・・っ!」
           「お〜い!中に誰かいるのか?」
俺が独り言を叫びそうになった時、外から会いたくて仕方なかった人の声が聞こえた。
「し、ししし宍戸さん!?」
あまりのことに思い切りどもってしまう。
「長太郎か?ワリィけど、ドア開けてくれ!今両手が塞がってんだよ。」
「は、はい!!」
俺は急いでドアを開けた。
すると入ってきたのは大きな段ボール箱・・・を持った宍戸さんだった。
「どうしたんですか?その箱?」
「これか?なんか知んねーけど、今日はやたらと女子がチョコとかプレゼントとかくれてよ〜。」
「なんか知んねー・・・って、今日はバレンタインだからじゃないですか!」
「あぁ、そうか!すっかり忘れてたぜ。女ってのはどうしてこういうイベントが好きなのかねぇ・・・」
まったく、こういうところが宍戸さんらしいというかなんというか。
それにしてもこの数・・・やっぱり宍戸さんってモテるんだなぁ。
さっきの忍足先輩はこんな気持ちだったんだろうか・・・?
「あ、そういえば今日部活休みですよ?」
「えっ!?そうなのか?」
「樺地に会いませんでしたか?」
「いや、見てねぇ。」
よかった〜、これで今日の俺の『宍戸さんから誕生日プレゼントを貰う』という望みがかなえられる可能性が!!
と言うのも、以前特訓に付き合った時、
[付き合わせて悪かったな。お礼に、お前の誕生日にでも何かしてやるよ。]
と約束してくれたのだ。
でも、バレンタインのことも忘れてるようじゃ、俺の誕生日の事なんて覚えてないだろうな・・・
しかしそんな悩みも、宍戸さんの一言で吹っ飛んでしまった。
「そうだ長太郎!せっかくだし、ちょっと打って帰らねーか?」
「いいですね!そうしましょう。」


それから2時間ほど2人で試合をしたりした。
サーブでは、ノーコンだのヘタレだの、いろいろからかわれたけど・・・
ヘタレは関係ないじゃないですか!!
ちなみに、宍戸さんの圧勝。


「どうすっかな〜?コレ。」
制服に着替え、段ボール箱を見つめながら宍戸さんがそう呟く。
「ちょうど小腹も空いたし、少し食べて帰るか!おい長太郎、手伝え!!」
そして俺もそれを食べる事に・・・
「うえ〜、流石にチョコレートがほとんどだな。どうせならチーズサンドとかくれりゃいいのによ。」
「甘いもの苦手でしたっけ?」
「ん〜、食べれなくはないけど、あんまり好きじゃねぇ。」
とか言って、宍戸さんの事だから、時間かかってでもちゃんと全部食べてあげるんだろうな。
「ここにジンジャークッキーとかありますよ。」
「まだそっちの方が食べれるかも。」
他愛のない会話をしながら、俺たちは箱の中のお菓子を食べた。


俺たちは帰路についた。
結局、貰えなかったな・・・まぁ、放課後一緒に過ごせただけで幸せか。
「じゃあ、俺こっちなんで。」
そう言って俺は別の道へ行こうとした。
その時、
「長太郎!」
急に名前を呼ばれ振り向くと、その瞬間、何かが唇に触れた。
ま、まさかコレって・・・
「キ・・・う゛っ!?」
言おうとすると、イキナリ手で口を押さえられてしまった。
「口に出すんじゃねぇよ、バカ!」
「スイマセン・・・」
「誕生日おめでとうな。」
「え!覚えててくれたんですか!?」
「まったく、激ダサだぜ・・・」
そして、お決まりのセリフ。


キスは、ほんのりチョコの味がした。


*オワリ*

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〜あとがき兼いいワケ〜

まずは・・・HAPPY BIRTHDAY!長太郎☆
初鳳宍です。思ったより長くなってしまいました。
アホキャラばっかでスイマセン(特に忍足。でも私は忍足好きですよ〜)
しかも前置き長いし、鳳宍のはずが忍跡に・・・(ウチは何気に忍跡も推奨しています(笑))
ただ単に、最後のキスシーンが書きたかっただけなんだけどさ・・・
なんだかんだ言って、宍戸さんはチョタには甘いと思うのよね。
でも、どうせならもっと宍戸さんを男前に書きたかったなぁ。
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