『てとて。』


「うぁ〜、寒ィ・・・」
2月某日。
鉄生はREDの入り口の前で、ある人物を待っていた。
と言うより、待たされていた。

その日は珍しく、鉄生と陵刀は同じ時間に仕事が上がり、
陵刀が園まで車で送ってくれるというので、鉄生はお言葉に甘えさせてもらうことにした。
そして、二人一緒にREDのドアを出た時だった。
「・・・車のキー、置いてきちゃったみたい。」
と、カバンをゴソゴソしていた陵刀が思い出したように言った。
「ったく、何やってんだよ・・・」
「すぐ取ってくるからちょっと待ってて。」
そう言って陵刀は、キーを取りに戻ったのだ。

あれからもう1時間近く経つ。
キーを取ってくるだけなのだから、本来なら5分も掛からないはずだ。
辺りは日が落ち始め、雲も多くなってきた。
冷えた手に吐きかける息も、白く姿を現している。
後ろでドアが開くたび、陵刀かと思い振り返るが、出てくるのは診察を終えた患畜と飼い主やREDの職員ばかりだ。
「いつまで掛かってんだよ・・・」
先程から心の中で思っていたことを、とうとう声に出して呟く。
ぼんやり眺めていた空からは、白い雪がチラチラと降り始めた。
「寒いはずだ・・・」
はぁ・・・と鉄生が大きなため息をついたその時だった。
「遅くなってゴメン!」
背中の方からやっと、待ちわびていた声が聞こえた。
走ってきたのか、少し息が上がっている。
「何やってたんだよ!こんな寒い中でずっと待たせやがって!」
陵刀が来た瞬間、長時間待たされた事の怒りよりも嬉しさが勝っていた鉄生だったが、とりあえず言うことは言う。
「ごめんごめん、ちょっと院長に掴まっちゃって・・・って、鉄生くんずっとここで待ってたの!?」
「あ?そうだけど・・・」
「病院の中で待ってれば良かったのに。」
「あ・・・!」
始め、陵刀はすぐ戻ってくるだろうと思っていた鉄生は、そんなこと全く考えていなかった。
陵刀はため息をつき、呆れたような顔をした。
「まったく、手袋もしないで・・・ハイ、これ。」
渡されたのは、陵刀がしていた手袋の片方。
「それ左手に嵌めて。」
「あ、あぁ。」
言われた通り、鉄生はその片方の手袋を自分の左手に嵌めた。
冷えた手にじんわりと熱が染み込んでくる。
「で、右手はこっちv」
鉄生は右手を、手袋を外した陵刀の左手に捕らえられ、そのまま陵刀のコートのポケットに突っ込まれた。
「こんなに冷えて・・・」
「うわっ!」
その手をギュッと握られ、鉄生の体温は一気に上がった。
「ん?嫌だった?」
「そ、そんなこと・・・ねーけど・・・」
陵刀に、赤くなっているであろう自分の顔を見られまいと、少しうつむき加減になる。
「良かったvじゃあ、このまま駐車場まで行こっか。」

鉄生にとって、駐車場までのたった数十メートルの道のりが、その日はとてもとても長く感じられた。


*END*                       

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〜あとがき兼いいワケ〜

ウチの陵鉄って、キスやらエチーはしてるのに、
恋人たちの第一段階であり、第一の壁であろう「手を繋ぐ」という行為をしていない!!
と思い、書いてみました。
手を繋ぐ方法が少女マンガの王道&ベタでスイマセン・・・
季節柄、他に思いつかなかったもので・・・
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